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債務整理のメリットとデメリットは?借金減額後に生活への影響はある?

債務整理とは、債務者が借金の免除や減額を受けたり、返済期限の延長を受けたりできる借金救済制度です。

ただし、借金のある人なら誰でも債務整理を利用できるわけではなく、デメリットも存在します。

また、債務整理の手続きは複雑で、債務者本人だけで進めていくのは困難です。

しかし、債務整理は借金を抱える方々にとって、借金問題を解決し、生活再建を目指せる有効な方法といえます。

そこで今回は債務整理のデメリットや、デメリットの影響を最低限に抑える方法等も解説していきます。

目次

債務整理とは?3つの手続きの基礎

債務整理とは、借金をした人(債務者)が現在返済中の借金の減額・免除や、返済期限の延長を図るための借金救済制度です。

借金を大幅に減額したい人は「個人再生」、借金の免除を希望する人には「自己破産」という債務整理の方法があります。

個人再生も自己破産も裁判所に申立て、手続きを進めていきます。

一方、返済期限の延長や利息のカットを目指したい人は、任意整理を選びましょう。

任意整理は裁判所に申立てず、お金を貸した側(債権者)と直接話し合いながら、和解を進めていきます。

ただし、債務者がいろいろな債務整理を自由に選べるわけではなく、法定された条件を満たさなければ利用できない方法もあるので注意が必要です。

任意整理

任意整理は債務者と債権者が交渉し、借金に関して和解を目指す債務整理法です。

裁判に申立てる必要がないので、裁判費用のかからない点はメリットです。

任意整理は法律に明記されていない方法なので、交渉当事者で自由にスケジュール調整を行い、和解の話し合いが進められます。

また、債務者に複数の債権者がいるならば、交渉したい債権者を任意に選択可能です。

債務者・債権者が合意すれば、返済期間の延長や借金の減額を柔軟に取り決められます。

主に減額対象となる債務は次の通りです。

  • 遅延損害金:返済期日までに返済しないとき、ペナルティとして課せられる損害賠償金
  • 利息:任意整理の和解成立後~完済までに発生する予定の将来利息、最後の返済日~任意整理の和解成立日までに発生した経過利息

ただし、実際に借りたお金(元金)の減額は非常に困難といわれています。

また、債務者の提案に債権者が応じないと、任意整理を進められない点に注意しましょう。

個人再生

個人再生とは借金を大幅に減額(最高1/10まで減額可能)し、原則として3年間(最長5年)にわたり分割し返済していく債務整理法です。

裁判所から個人再生が認められると、原則として債務者は自分の財産を処分せずに、借金の減額ができます。

なお、個人再生が認められても債務者の負う住宅ローンは減額対象となりません。

しかし、申立のときに「住宅ローンの特則(住宅資金特別条項)」を希望すれば、債権者から自宅を競売にかけられずに、返済の継続が可能となります。

一方、個人再生が誰でも利用可能な債務整理ではない点に注意しましょう。

個人再生は2種類あり、それぞれ対象となる債務者・条件が異なります。

  • 小規模個人再生:主に自営業者等が対象、条件として借金総額(住宅ローン除く)5,000万円以下で将来にわたり継続的な収入の見込みがあること
  • 給与所得者等再生:主にサラリーマンが対象、条件として借金総額(住宅ローン除く)5,000万円以下で将来にわたり継続的な収入の見込みがあり、収入は給料等でかつ受け取る金額が安定していること

条件に該当しなければ、個人再生で借金の減額はできません。

自己破産

自己破産とは、裁判所に申立て借金全額の免除を認めてもらう債務整理法です。

自己破産には3つの種類があります。

  • 管財事件:債務者は破産手続費用を支出できると裁判所が認めたときの手続き。債務者は予納金を裁判所に支払う必要があり、裁判所から破産管財人が選任される。
  • 少額管財事件:弁護士が代理人になると可能な手続き。予納金は低額となり、弁護士・破産管財人が協働して手続きを進める。
  • 同時廃止事件:債務者に破産手続費用を賄う資力のないとき進められる手続き。破産管財人は選任されず、破産手続開始決定と同時に裁判所の決定がなされる。

裁判所が破産手続を認めれば借金はゼロになるものの、主に次のようなデメリットがあります。

  • 債務者名義の不動産・自動車等は基本的に没収・処分されてしまう
  • 自己破産をすると、特定の職業に一定期間就けない
  • 破産手続中に居住地を離れる場合、原則として裁判所の許可を受けなければいけない

また、免責不許可事由(借金の原因がギャンブルや浪費だった等)に該当すると、借金の免除は許可されないので注意しましょう。

債務整理の主なデメリット【共通】

債務整理を利用すれば借金の免除または減額できる反面、デメリットが存在します。

場合によっては、債務者本人や家族の生活に支障が出るリスクもあるでしょう。

主に次のようなデメリットがあります。

  • 信用情報(ブラックリスト)へ登録される
  • 保証人・家族への影響
  • 官報で公告される
  • 着手金や成功報酬など費用がかかる

ただし、前もってデメリットを把握し対応策も講じていれば、リスクを可能な限り軽減できます。

信用情報に事故情報(ブラックリスト)が登録される

債務整理をすると、信用情報機関の管理している信用情報に、事故情報(ブラックリスト)が登録されてしまいます。

信用情報に事故情報が登録されると、一定期間にわたり新たな借入やクレジットカード作成ができなくなります。

また、現在利用しているクレジットカードも強制解約となるので注意しましょう。

信用情報とは、銀行や消費者金融・クレジットカード会社等が、申込者を審査するときに利用する情報です。

信用情報に債務整理をしたという情報が登録されると、「自社に損失を与える可能性がある人」と判断され、審査に落とされるおそれがあります。

信用情報を管理している信用情報機関は次の3つです。

  • 株式会社日本信用情報機構 (JICC):主に消費者金融、信販会社、ローン会社等が加盟
  • 株式会社シー・アイ・シー (CIC):主にリース会社、貸金業を行う保険会社、各種ローン会社(自動車ローン)等が加盟
  • 全国銀行個人信用情報センター( KSC):銀行の他、信用金庫、信用組合、農協組合等が加盟

信用情報機関はお金を貸す側に対し、損失が出ないように事故情報(ブラックリスト)を開示し、注意を促す役割があります。

登録期間と解除の目安

信用情報機関に債務整理をしたという事故情報(ブラックリスト)が登録されても、一定の期間が経過すれば登録は解除(抹消)されます。

ただし、各信用情報機関の登録解除(抹消)の目安は次の通りです。

  • 株式会社日本信用情報機構(JICC):~5年
  • 株式会社シー・アイ・シー( CIC):~5年
  • 全国銀行個人信用情報センター( KSC):~7年

つまり、債務整理が認められてから、およそ5〜7年は事故情報が登録されてしまいます。

登録期間の経過で、新規の借入やクレジットカード作成が可能となる場合もあるでしょう。

ただし、お金を貸す側(消費者金融、カード会社等)は、自社で過去の債務整理の情報をデータベース化している可能性があります。

信用情報機関の登録期間が過ぎても、お金を貸す側に事故情報の記録が残っていれば、審査に落ちる事態も想定されます。

クレジットカード・ローンへの影響と代替策

債務整理を行えば借入やクレジットカードの作成ができなくなり、使用中のカードも強制解約となる点に注意が必要です。

債務整理後、キャッシュレス払いに慣れた債務者は不便を感じることでしょう。

そのため、商品の購入やサービスへの支払い方法を工夫する必要があります。

クレジットカード以外で利用できる、次のキャッシュレスサービスを検討してみましょう。

  • デビットカード:クレジットカードと同様に支払いができ、実際に使ったお金は即時、預金口座から引き落とされる決済方法。
  • プリペイドカード:一定の金額をチャージし、チャージされた金額内で支払いができる決済方法。
  • QRコード決済:スマートフォンアプリを操作し、QRコードを使用し決済する。預金口座からチャージする仕組みなら、債務整理後も利用可能。

なお、プリペイドカードやQRコード決済の中には、後払い可能なサービスが増えています。

保証人・家族への影響

債務整理を行えば債務者本人だけではなく、その家族の生活にも影響を与える可能性があります。

とくに債務者の家族が借金の保証人となっている場合は注意しましょう。

保証人は債務者に代わって借金の返済をしなければいけません。

個人再生や自己破産を利用するとき、債権者は保証人である家族に返済を求める可能性が高いです。

一方、任意整理の場合であれば債務者本人の他、保証人である家族も一緒に債権者との交渉へ参加すれば、保証人への返済請求を回避できる場合があります。

なお、家族が保証人になっていなければ、債権者は家族に返済請求を行いません。

官報で公告される

個人再生や自己破産を行う場合は、「官報」に債務者(申立人)の住所・氏名等が掲載されます。

官報とは、法律・政令・条約等の公布をはじめ、国や特殊法人等の諸報告・資料の公表等を掲載する国の機関紙です。

債務整理の事実が公表されてしまい、債務者は「他人に知られてしまうのではないか。」と、不安を感じてしまうことでしょう。

ただし、官報に掲載されても、一般人や企業が目にする機会はほとんどありません。

債務整理の事実を友人や知人、勤務先に知られる可能性は低いです。

着手金や成功報酬など費用がかかる

弁護士や司法書士のような法律の専門家に依頼すると、報酬(着手金・成功報酬)を支払わなければいけません。

着手金とは弁護士や司法書士に依頼するときに、必ず支払わなければならない費用です。

一括払いが基本で、債務整理に成功しても失敗しても、返金されないので注意しましょう。

成功報酬とは債務整理が成功したとき、支払いが発生する費用です。

成功報酬金に関しては、分割払いが可能な弁護士・司法書士事務所もあります。

報酬の目安は概ね次の通りです。

債務整理の種類弁護士司法書士
任意整理・着手金:1社2万円〜 ・減額報酬:減額できた返済金額の10~20%程度着手金・成功報酬含め5万円~
個人再生・着手金:33〜44万円・成功報酬:33〜55万円1人25万円~
※申立代理人は不可
自己破産・着手金:22〜44万円・成功報酬:30万円〜1人20万円~
※申立代理人は不可

弁護士に依頼し個人再生・自己破産の申立が認められると、50万円以上の報酬がかかります。

司法書士に依頼する場合、弁護士と比較して報酬は割安です。

任意整理の場合は、債権者ごとの個別の借金が140万円以下の場合、認定司法書士(特別な研修を受け認定考査に合格した司法書士)が代理人となり対応できます。

一方、個人再生・自己破産に関しては書類作成・収集のサポートが可能で、裁判所への申立代理人にはなれません。

手続き別デメリットと対処法

債務整理を行う場合、任意整理・個人再生・自己破産どのような手続きをとるかで、債務者の負うリスクは異なってきます。

任意整理・個人再生・自己破産それぞれのデメリットは次の通りです。

  • 任意整理:元本の減額は困難、交渉を拒否される可能性がある等
  • 個人再生:条件が厳しい、手続きが長期化する場合もある等
  • 自己破産:債務者名義の資産が没収・処分される、一部の職業資格が制限される等

ただし、前もってデメリットに対処する方法を把握していれば、深刻な事態に発展するリスクを軽減できます。

任意整理のデメリット

任意整理は、債務者と債権者との任意の交渉で和解を図る債務整理法です。

裁判所への申立が不要な反面、債権者が交渉に応じなければ手続きは進まなくなります。

任意整理を進めていくには、債権者も納得する返済計画の作成が必要です。

また、任意整理による和解を目指すなら、債務者本人だけで対応するより、弁護士や司法書士からのアドバイスやサポートを受けた方が、交渉の成功率は高まります。

元本は原則減らない

任意整理の場合、元本自体は軽減できない可能性が高い点に注意しましょう。

任意整理は将来利息分等を削減し、返済額を確定後、基本的に3年(長期で5年)の分割払いで、債務者・債権者双方の合意に至るケースが多いです。

任意整理に応じるかどうかは債権者の自由であり、元本の軽減に同意する可能性は非常に低いことでしょう。

たとえ債権者が納得しなくとも、裁判所から申立が認められたとき、法的強制力のある借金減額が可能な民事再生や、免除を受けられる自己破産とは異なります。

減額幅が交渉次第で不確定

債務者の希望通りに借金が減額できない場合もあります。

債権者に任意整理を提案するときは、「返済計画書」を提出するのが一般的です。

任意整理の返済計画書とは、「もしも将来利息等をカットできたなら、〇年間で毎月このくらい返済していきます。」という計画書です。

計画を立てても、債務者本人に都合のよい返済計画と受け取られた場合、債権者側は納得しません。

例えば返済期間5年の返済計画を作成した場合、債権者は次のような不満を持つ可能性があります。

  • 5年の返済期間では、毎月少額しか返済してもらえず早期の回収が難しい
  • 返済が長期化すると、債務者の経済状況の悪化で回収不能になるかもしれない

このような理由で返済計画の大幅な修正を求められたり、交渉不成立となったりするケースも想定されます。

そのため、債務者は借金残高・現在の収入・家庭の諸事情も考慮し、返済計画書の作成や交渉を行わなければいけません。

これまで任意整理の経験のなかった債務者には、非常に難しい作業といえます。

返済計画の作成や債権者との交渉に不安があれば、任意整理に実績豊富な弁護士や司法書士へ依頼した方がよいでしょう。

弁護士や司法書士は、債務者本人と相談しながら説得力のある返済計画を作成する他、債権者との交渉も任せられます。

交渉拒否・口座凍結リスク

任意整理に応じるのは債権者次第であり、ケースによっては交渉を拒否され、訴訟を提起される場合があります。

債権者から拒否されないためには、債権者側も納得する返済計画の作成が必要です。

任意整理を拒否された後は、債権者から訴えられてしまう事態が想定されます。

債権者が借金回収のために訴訟を提起し、債権者の主張通りの判決が確定すると、最終的には預金口座や給与等が差押えられてしまいます。

そのため、債権者から任意整理を拒否された場合は次の方法を検討してみましょう。

  • 任意整理を弁護士または司法書士に依頼し、交渉をやり直す
  • 任意整理を諦め、個人再生や自己破産の手続きを行う

弁護士または司法書士に依頼すれば、これまでの交渉経験や法律の知識を活かして説得にあたるので、債権者が交渉に応じる可能性は高いです。

また、任意整理の交渉を拒否されてしまっても、自己破産・個人再生を行えば、差押え(強制執行)を停止させられます。

個人再生のデメリット

個人再生は裁判所に「小規模個人再生手続」または「給与所得者等再生手続」を行い、借金の大幅な減額を目指す債務整理法です。

そのため、条件面で厳しい制約がある点に注意しましょう。

裁判所への申立が必要なので、様々な書類の作成・収集の他、手続費用も支払う必要があります。

裁判で個人再生手続を進めていくので、債務者だけで対応する場合は難しい作業になるでしょう。

安定収入が必須

安定した収入がある事実を証明できないと、裁判所から個人再生の認可は得られません。

小規模個人再生・給与所得者等再生ともに、将来にわたり継続的な収入を得る見込み(給与所得者等再生はさらに収入が給料等、かつ金額が安定している)という条件を満たす必要があります。

なぜなら個人再生を進めるときは、債務者本人の収入を踏まえた「再生計画案」の作成・提出が求められているからです。

裁判所に再生計画案の根拠となる安定した収入を証明するため、申立のときに源泉徴収票や給与明細を提出しなければいけません。

官報掲載で家族にバレる可能性

個人再生を行うと、官報に債務者(申立人)の住所・氏名等が掲載されるので、家族や友人・知人に発覚してしまうおそれがあります。

官報は誰でも閲覧できるため、家族に黙って個人再生を進めたい人は不安を覚えることでしょう。

個人再生を進める過程で3回官報に掲載されます。

  • 個人再生手続開始決定時
  • 再生計画案の書面決議または意見聴取時
  • 再生計画認可決定時

ただし、たとえ住所・氏名等が掲載されても、実際に一般人が内容を確認する機会はほとんどありません。

住宅・車の維持が難しい

個人再生を行えば、ローン返済中の住宅や車を失う可能性があります。

ローン返済中の住宅があるときは、申立のときに「住宅ローンの特則」を希望すれば、債権者から自宅を競売にかけられる心配はありません。

一方、車のローンが残っていて所有権留保が付されている状態の場合、個人再生の申立をすると、車を引き上げられてしまう可能性が高いです。

そこで次のような方法を検討しましょう。

  • 親族にローンの肩代わりを頼み、直接信販会社に支払いをしてもらう
  • 別除権協定の締結:債務者が車の評価額相当分を返済し、債権者に車を処分しないでもらう協定
  • 担保権消滅許可申請:車の評価額分を一括で裁判所に納め、裁判所から担保権消滅の許可を出してもらう方法

なお、債務者が車のローンだけを完済する方法は、偏頗弁済(へんぱべんさい)と判断される可能性があります。

偏頗弁済は特定の債権者を優遇する行為であり、個人再生や自己破産でも禁止されています。

手続き長期化と費用負担

個人再生は裁判所で手続きを進めていくので、認可を受けるまでに時間がかかり、費用の負担も重くなるケースに注意しましょう。

個人再生の内容によって差は出てくるものの、申立〜認可決定の確定まで半年から1年程度を要します。

また、申立にかかる費用(目安)は次の通りです。

  • 印紙代(申立手続費用):1万円
  • 郵便切手:3,500円程度
  • 代理人弁護士がいるときの予納金(官報の公告費用のみ):2万円程度
  • 代理人弁護士がいないときの予納金(官報の公告費用、個人再生委員報酬等):15万円程度

費用総額は代理人弁護士がいるなら3万円程度、代理人弁護士がいないときは18万円程度となります。

自己破産のデメリット

自己破産とは、裁判所に免責許可決定を受け、借金全額の免除を目指す債務整理法です。

自己破産が認められると、債務者名義の財産は基本的に没収・処分されてしまいます。

裁判所へ申立前に、生活の拠点や家財道具を失うリスクについて、よく検討しておきましょう。

また、一定期間にわたり就けない職業がある他、旅行・転居の自由も制限されてしまうので注意が必要です。

高価な資産の処分

自己破産を行う場合は、基本的に債務者名義の住宅や車、現金・預貯金も没収・換価され、債権者へ分配されます。

ただし、次のような財産は「自由財産」として没収されません。

  • 99万円までの現金
  • 残高が20万円以下の預貯金
  • 見込み額が20万円以下の生命保険の解約返戻金
  • 処分見込み価額20万円以下の自動車
  • 家財道具
  • 居住用家屋の敷金債権
  • 電話加入権
  • 支払い見込み額が160万円相当額以下の退職金債権(160万円超:退職金債権の7/8)
  • 差押えが禁止されている動産または債権
  • 破産管財人が換価しないと認めた財産

一部職業・資格制限

自己破産手続中および破産後、特定の職業に就く資格を一定期間、喪失してしまう点に注意が必要です。

  • 警備員
  • 弁護士・税理士・司法書士・行政書士等の士業
  • 証券会社等の外務員
  • 保険外交員 等

いずれかの職業になりたかった人は、自己破産を行うかどうかよく検討してから、手続きを進めてみましょう。 

ただし、債務者(破産者)に対して、裁判所による免責許可が確定したならば、資格を取り戻せるケースが多いです。

連帯保証人への請求

債務者に自己破産が認められた場合でも、連帯保証人は債権者から返済を求められる可能が高い点に注意しましょう。

自己破産の対象となるのは債務者本人であり、連帯保証人は借金の返済を免除されません。

債務者から借金を回収できなくなった債権者は、連帯保証人に対し全額返済を一括請求するのが一般的です。

自己破産により、連帯保証人は多大な経済的負担を負う事態となるでしょう。

そのため、連帯保証人との相談はもちろん、弁護士等とも話し合い、自己破産を進めるかどうか慎重に判断する必要があります。

旅行・転居の自由制限

自己破産手続期間中、引っ越しや旅行をするとき一定の制約がある点に注意しましょう。

裁判所へ申立て許可を得ておかなければ、引っ越しや旅行は行えません。

ただし、当該制限は破産管財人が選任されている破産事件で、かつ手続きの期間中に限定されます。

同時廃止はもちろん免責許可の決定が確定した後なら、自由に引っ越しや旅行が可能です。

免責不許可事由(ギャンブル等)に該当すると免責されない

債務者が免責不許可事由に該当すると、自己破産は認められません。

次の行為が免責不許可事由にあたります。

  • 債権者を害する目的で、財産を隠匿
  • 特定の債権者だけを優先し返済
  • ギャンブルやショッピング、株式投資等へ多額の資金を費やした
  • 弁護士に依頼する時点でも新たな借り入れ
  • 裁判所・破産管財人へ虚偽の事実を報告
  • 前回の免責許可決定確定日から7年以内に免責許可の申立をした

借金の返済を免れようと財産の隠匿や、うそをつく行為はもちろん、単に遊興費へお金をつぎ込んだ等の事実が発覚すると、基本的に免責不許可となります。

債務整理後の生活への影響と対処法

債務整理で借金の減額や免除に成功したからといって安心はできません。

債務整理後、日常生活の中で一定の制約を受ける可能性があります。

商品やサービスの購入が不便とならないか、家族に影響が及ぶ事態とならないか、債務整理を行う前によく検討しておきましょう。

事前に想定される影響への対処や代替策を考えていれば、日常生活へ支障が出る事態を最小限に抑えられます。

クレジットカード・キャッシュレス決済

債務整理後はクレジットカード決済に代わる支払い方法を利用しましょう。

債務整理を行うと使用中のクレジットカードは強制解約となり、5〜7年は新たなカード作成も困難です。

そこで商品の購入やサービスを利用するとき、次のような支払い方法で対応します。

  • 現金払いで対応する
  • キャッシュレス払いに慣れていたらデビットカード、プリペイドカード、QRコード決済を利用する

債務整理後、新たにデビットカードやプリペイドカード、QRコードアプリ等を申し込んでも、利用を拒否されるケースはほとんどありません。

車・住宅など高価財産

債務者名義の財産を没収・処分されたくないなら、債務整理法を慎重に選びましょう。

基本的に自己破産の場合は債務者名義の住宅や車等が、個人再生でもローン返済が完了していない住宅や車が引き上げられてしまいます。

個人再生の場合は住宅なら住宅ローン特則の利用、車なら別除権協定や担保権消滅許可申請で対応できます。

一方、任意整理であれば債権者を選んで交渉が可能です。

そのため、住宅ローンや車のローンを組んだ債権者(銀行等)は外し、他の債権者と交渉して構いません。

任意整理であれば、債権者から債務者名義の住宅や車を引き上げられる事態も回避できます。

携帯電話・通信契約

債務整理後も、基本的に携帯・スマートフォンは使い続けられ、新規の契約も可能です。

料金の負担を抑えるため、格安SIMや中古端末の購入等も検討してみましょう。

また、債務者に料金の未納がなく、端末本体料金に残債もない場合、そのまま利用して問題ありません。

なお、債務整理をすればクレジットカードは使えなくなるので、事前にカード払いから口座引落またはコンビニ払いに、支払い方法を変更しておく必要があります。

ただし、端末の分割払いが完了する前に債務整理すれば、信用情報に事故情報が登録され解約となるおそれがあります。

債務整理後、新規の分割購入は原則として不可能となる点にも注意しましょう。

仕事・転職・資格

債務整理法によって、仕事・資格が法律上制限されてしまう可能性に注意しましょう。

ただし、任意整理や個人再生を行っても、仕事・転職・資格には影響ありません。

一方、自己破産をしてしまうと転職に影響はないものの、弁護士や司法書士・行政書士・公認会計士・税理士等の資格は喪失してしまいます。

なお、多くの資格では免責許可を得られると資格が復活し、再登録を行い仕事の再開ができます。

外交員の場合は、保険会社が外交員の登録取消し等の手続きをとらなければ、資格を使って業務が可能です。

家族への影響

債務整理の影響を受けるのは基本的に債務者本人です。

ただし、次のようなケースでは家族にも大きな影響を及ぼすおそれがあります。

  • 家族の誰かが保証人になっている場合、債権者から返済を請求される
  • 自己破産をすれば債務者名義の住居が没収・処分され、家族も生活の本拠を失う
  • 個人再生をすればローンの残る住居・車が引き上げられ、家族の生活が不便になる場合もある
  • クレジットカードの主会員が債務整理を行うと、家族カードを利用していた家族も利用不可能となる

そのため、事前に家族とよく相談し、債務整理を進めるべきかどうかについて検討した方がよいです。

債務整理のよくある誤解と真実

債務整理は任意整理・個人再生・自己破産と種類があり、それぞれ得られる効果や手続き方法も違います。

債務整理の仕組みは複雑なので、わかりにくい部分も多いことでしょう。

ここでは、債務整理を検討するとき誤解しやすい内容について取り上げてみます。

戸籍・住民票・マイナンバーには記録されない

債務整理をした事実(事故情報)は戸籍や住民票の他、マイナンバーカードにも一切記録されません。

一定期間にわたり債務整理をした事実が残るのは、信用情報機関の管理する信用情報です。

信用情報を管理するのは民間団体なので、公的機関の書類等には明記されません。

ただし、次のような形で記録が残ってしまいます。

  • 官報で自己破産・個人再生を行った旨の掲載
  • 消費者金融や銀行等の債権者が、自社で債務整理の事実(事故情報)を記録・保管

年金・生活保護への影響はない

債務整理をしても、公的年金の受給や生活保護への影響はありません。

任意整理・個人再生はもちろん、自己破産をした場合も同様です。

なぜなら、公的年金や生活保護は受給者の生活に必須のものと考えられており、「差押禁止財産」に該当するからです。

差押禁止財産とは、借金の滞納や債務整理をしても、差押えてはならない財産を指します。

一方、生命保険会社が扱っている「個人年金保険」は、差押えの対象になる財産なので注意しましょう。

個人年金保険は、あくまで保険会社との契約で形成される個人の財産と扱われます。

債務整理を理由に解雇されることはない

基本的に、勤務先から債務整理を理由に解雇されるケースはほとんどありません。

任意整理・個人再生・自己破産いずれの場合も同様です。

労働契約法では、客観的に合理的な理由がなければ解雇できないと規定(労働契約法第16条)されており、債務整理をした事実は原則として「合理的な理由」に該当しません。

ただし、自己破産すると資格を喪失する仕事があるので注意しましょう。

自己破産をした人が証券会社の証券外務員や保険の外交員、旅行業者、警備員等ならば適法に解雇されるおそれがあります。

家族名義の財産は没収されない

自己破産をしても、債務者(破産者)本人以外の家族の財産は没収されません。

自己破産で没収の対象となるのは、基本的に債務者名義の財産のみです。

ただし、例えば家族名義であっても、実質的には債務者(破産者)自身が積み立てた預貯金であれば、没収対象となる可能性があります。

また、債務者(破産者)が自己破産する直前に、所有していた土地・建物を自分の名義から、家族名義に変更するような行為も控えましょう。

なぜなら、破産管財人から「財産隠し」と疑われてしまい、免責不許可事由に該当する可能性が高くなるからです。

債務整理デメリットに関するよくある質問

債務整理にデメリットはあるものの、事前に任意整理・個人再生・自己破産それぞれの特徴を把握しておけば、手続きを進めるときに十分な対応が可能となるでしょう。

ここでは、債務整理のデメリットに関するよくある質問を取り上げます。

債務整理と任意整理の違いは?

任意整理も債務整理の1種であり、借金の減額のために利用されている方法です。

ただし、個人再生・自己破産と比較すれば次のような点が大きく異なります。

  • 任意整理は債務者・債権者の話し合いで和解を目指す手続きで、個人再生・自己破産は裁判所に申立て手続きを進める
  • 任意整理は利息等のカットや返済期間の延長を目指す手続きで、個人再生・自己破産は借金の大幅な減額や免除を目指す手続き

任意整理は他の債務整理と異なり、裁判所での手続きが不要となります。

一方、個人再生のような元金を含めた大幅な借金の減額が難しく、自己破産のように借金そのものが免除されない点も把握しておきましょう。

生活保護受給中でも債務整理できる?

生活保護受給中でも、債務整理の利用は可能です。

生活保護受給権を失わずに、債務整理の手続きを進められます。

ただし、自己破産を弁護士に依頼する場合は、生活保護受給者であっても50万円以上の報酬が目安となります。

生活が苦しく、報酬が大きな負担となるなら、法テラスの「民事法律扶助制度」を利用しましょう。

法テラスは、国が設立した法的トラブル解決の総合案内所です。

相談サービスの他、生活保護受給者や一定の所得以下の人を対象に、民事法律扶助として弁護士費用等の立替サービスを提供しています。

立替サービスの返済費用は原則毎月約5,000〜10,000円なので、無理なく分割返済が可能です。

家族や会社に知られずに手続きできる?

債務整理は、基本的に家族や勤務先から知られず手続きを進められます。

個人再生や自己破産の手続き中、債務者(申立人)以外の家族が裁判所に呼び出されるケースはほとんどありません。

ただし、家族が保証人になっているときは、債権者から返済を求められる可能性があります。

そのため、債務整理を進める前に、保証人と相談しておく必要があるでしょう。

債務整理後にクレジットカードは使える?

債務整理後、債務者本人が主会員となっているクレジットカードは使用できなくなります(強制解約)。

また、信用情報に事故情報が登録されている5〜7年は、新たなクレジットカードの作成も困難です。

ただし、デビットカードやプリペイドカード、スマートフォンのQRコード決済は基本的に利用可能です。

クレジットカード以外の支払い方法で代用すれば、商品購入やサービスへの支払いに不便は感じないことでしょう。

債務整理しなかった場合のリスクは?

債権者に借金を返済できず、さらに債務整理を行わなければ、次のようなリスクが想定されます。

  • 借金が膨らみ続け、返済不能な状態となる
  • 債権者から執拗な督促や取り立てを受ける
  • 債権者から訴えられ、最終的には財産の差押えを受ける

債務者の財産が没収される事態になる他、債権者からの督促等で精神的にも追い詰められる状況となります。

借金の返済が難しくなったら迅速に弁護士へ相談したり、債務整理を検討したりして、問題の解決を図っていきましょう。

債務整理をするメリット

債務整理を行う場合、気を付けなければいけない点は多いものの、借金を抱える債務者にとっては大きなメリットが得られる方法です。

債務整理を活用し、借金の減額・免除を行えたなら、債務者は迅速に生活再建を図れることでしょう。

借金の減額や免除ができる可能性

債務者の経済事情やニーズに応じて、柔軟に債務整理を利用できます。

  • 少ない費用で個別に債権者と交渉したい→任意整理
  • 安定した収入があり、大幅な借金減額を目指したい→個人再生
  • 返済の見込みがなく、借金をゼロにしたい→自己破産

必ず債務整理が実現できるわけではないものの、次のように手続きを変更しても構いません。

  • 任意整理を提案したのに債権者が応じてくれない→個人再生または自己破産に変更
  • 個人再生または自己破産が認められなかった→任意整理に変更

債務整理の方法の一つが認められなくとも、別の方法が認められ、借金問題を解決できる場合があります。

督促や取り立てが一時的にストップされる

債務整理を開始すれば、債権者からの督促・取り立てが一時的に停止されます。

ただし、停止されるタイミングは、任意整理・個人再生・自己破産それぞれ異なる点に注意しましょう。

  • 任意整理:弁護士や司法書士が受任通知を送付しない限り継続
  • 個人再生:裁判所が「再生手続開始決定」を出したタイミングで停止(申立後3〜4ヶ月程度)
  • 自己破産:裁判所が「破産手続開始決定」を出したタイミングで停止(申立後1〜4ヶ月程度)

任意整理は弁護士や司法書士に代理人を依頼し、受任通知を債権者に送付しない限り、督促・取り立ては停止されません。

まとめ:デメリットを理解して最適な債務整理手続きで再スタートしよう

債務整理は借金を抱える方々にとって、生活再建を図るための有効な方法といえます。

その一方で、任意整理・個人再生・自己破産にはそれぞれデメリットもあります。

債務者本人だけで手続きを進めるのは、非常に困難な作業といえるでしょう。
そのため、債務整理に実績豊富な弁護士や司法書士と相談し、手続きを依頼した方がよいでしょう。

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